おはよう☆







 あなたは知っているのかな。

 俺がこんなにも不安を持っていること。

 俺にはこれといったとりえなんて全然無いのに

 あなたの周りには素敵な人が沢山居る

 きっと 今はまだそれに気付いていないだけで。

 気付いたらきっと 俺なんかいらなくなるんじゃないのかな。

 その日が来るのが 俺は怖くて堪らない。

 あなたは いつまで俺を好きでいてくれますか?







 おはよう




 MVP戦が終わって、もうすぐ夏休み。夏休みに夢は膨らむけれど、その前に学期末テストが待ち構えている。

 「テストが終わるまで二人きりで会うのは控えませんか。」

 そう俺が言ったのはテストの一週間前。
 転校して来てまず思い知ったのはここの学力の事だ。
 俺の通っていた学校もそうレベルは低くない方だと思っていたけど、BL学園はそれよりも進んでいて、勉強だけでも追いつくのが大変だった。
 本当は七条さんに教えてもらいたいなぁ。なんて思っていたんだけど、七条さんだってテスト前だし、ただでさえこの間の学園MVP戦でお世話になっちゃっているから、これ以上迷惑を掛けたくない。
 そう思って自分からそう提案した事なんだけれど。
 提案からたった2日。
 もうギブアップしたくなっている自分をなんとか抑えている。

 テスト勉強をするからと、会計室に行くのも控えている。そうすると、七条さんと会う機会がほとんど無い事に気が付いた。
 まだたった2日しか経っていないのに、寂しくて堪らない。
 七条さんの声を聴きたい。触れて欲しい。
 そう願うのに、暫くの間は叶わない。

 「はぁ・・・。」

 溜め息が嫌に耳に付く。
 滅入ってばかりいて勉強が捗らないと、何の為にあんな提案をしたのか分からなくなってしまう。
 一通り解いてみた問題集の分からなかった所にチェックを入れ、席を立つ。

 「ここは和希に聞いてみよっと。」

 いい気分転換にもなるしと、机の上の教科書などを纏めていると、コンコンとドアがノックされた。

 「開いてるから入って良いよ。」

 多分和希だ。
 最近、和希は「一緒に勉強しないか?」と俺の部屋にやってくる。

 「よっ。捗ってる?」

 「ははっ、まあ・・・ぼちぼち。そっちは?」

 「俺もそんなとこかな。」

 思っていた通り、来客は和希だった。
 七条さんだったらいいなぁ・・・なんて思っていた事はもちろん内緒だけど、そんな筈が無い事は自分がよく分かっている。
 それに、一人より二人でした方が捗るし、和希ってば結構教えるの上手いんだよな。

 「ちょうどそっちに行こうと思ってたんだ。あっ、和希も何か飲むか?・・・ってお茶しかないけど。」

 「ああ、サンキュ。」

 座卓を出して二人で向き合う。
 俺はさっきチェックしておいた所を和希にさっそく聞いてみた。

 「ああ、これはな・・・。」

 やっぱり和希の説明は分かりやすいよなぁ。
 一通り教えてもらって、もう一度似た傾向の問題を解く。という事を何度か繰り返すうちにすっかり消灯時間を過ぎてしまった。

 「いつも悪いな。俺ばっかり教えてもらっちゃって。和希はテスト勉強大丈夫なのか?」

 「大丈夫じゃないから一緒にやってるんだろ?お前に教えてると俺の復習にもなるからな。」

 「よく言うよ。和希だって一緒になって悩んでた癖に。でも助かったよ、明日もよろしく。」

 「まかせろっ。」

 あんな事言ってたけど、和希には後で何かお礼しなくちゃな。
 兎にも角にも、目の前のテストに集中しなくちゃな。
 机に向かうと、俺は再び問題に取り掛かった。


 ピピピッ、ピピピッ・・・。
 忙しなくなり続ける電子音に、目を開ける。窓から差し込む光が、もう朝を告げていた。

 「やばっ。俺、昨日あのまま寝ちゃったんだ。」

 誰に言うでもなく一人呟いて、俺は肩に毛布が掛けられている事に気が付いた。

 「何これ・・・。昨日は何も羽織らなかった筈だけど。」

 ピピピッ、ピピピッ・・・。
 更に大きくなった電子音に、今度こそ大慌てで仕度を始めた。

 トントン。
 あっ、和希だ。

 「啓太、朝だぞ。もうしたく出来たか?そろそろ食堂行こうぜ。」

 「あっ、今行く。」

 ドアを開けると、もうすっかり仕度を済ませた和希が呆れた様な顔をして立っている。
 毎回寝坊をしては起こしてもらっている身であるから、呆れられてもしょうがないと思ってはいるのだけれど。

 「今日はちゃんと目覚ましで起きられたんだ。」

 「偉いじゃないか。啓太もやっと自分で起きることを学んだのか・・・。」

 そうかそうかと大げさに感心してみせるのが、少し気にはなるけど本当の事なので文句は言えない。

 「和希、先行くぞ。」

 いつまでも感心している和希は放って置くことにして、食堂に向かう。

 「あっ、待てよ。迎えに来た俺を置いて行く気か?」

 少し後ろで声はするけど、とりあえず目先の食事を楽しむことにした。



<・・・続>






接点が少ない事に気が付いた啓太君。
テスト期間中はそれでも我慢していたけれど、そろそろ我慢出来なくなりそうな予感です。
和希とは学年も同じでいつも一緒に行動しているのでしょうね。
和希は、啓太君を独り占めできてほくほく。啓太君は七条さんと会えなくてしょんぼりな感じです。

とりあえず一話目。
中途半端な所で続くですが、今日はもう限界なのでまた次回に。

葵葉奈でした。