恋心。 うららかな午後の日差しに誘われて、俺は今日もこっそりと生徒会室を抜け出した。 「さて、どこに行こうか?」 考えた所で思いつくのはお馴染みの海岸。 早速ヒデに見つかる前に・・・・と、海岸に向かって走った。 燦々と輝く太陽の光を浴びてキラキラとその表面を輝かせる蒼い海。 青い空に白い雲。 まだ少し冷たい海風を身体一杯に浴びて、思いっきり伸びをした。 「ふぅ〜、やっぱりここは最っ高!」 どすんとちょうど木陰になっている砂浜に座り、そのまま後ろに倒れる。 心地良い眠気に誘われる様に目を閉じる。 瞼に焼きついた様な太陽の光が暖かく感じた。 「・・・ぅさま。」 ゆさゆさと揺らされて、少しばかり覚醒した脳が、音を拾い上げた。 遠くで呼んでいる声がする。 「・・・・ぅん。」 この声は・・・・啓太か? 「王様っ!」 「んっ・・・・。」 ゆっくり目を開けると、俺の顔を覗き込んでいる啓太と視線が合った。 どうやらあのまま眠ってしまった様だ。 「ようっ、啓太。どうした?」 覗き込む啓太の頬がオレンジ色に染まり、あれからだいぶ時間が経ってしまった事に気が付いた。 「どうした?じゃありませんよ。またお仕事サボりましたね。おかげでずぅっと中嶋さんの機嫌が悪かったんですよ。」 そう言ってまくし立てる啓太に手を伸ばして、そのくせっ毛の髪をかき混ぜる。 柔らかい髪がふわふわと手に馴染む。 「よしよし。わかったから。」 それが堪らなく心地良くて、思わず何度もかき混ぜてしまった。 「もうっ、子ども扱いしないで下さいっ!」 目一杯大きく見開かれた瞳は”怒ってるんだぞ”と物語っている。 胸の前に握られた拳もまたそれを表している様だ。 しかし、そんな姿さえ愛しいと思ってしまうのだから、俺は相当重症なのだと思う。 まだ自覚したばかりのこの思いを、どうしたら怖がらせずに伝えられるのか。今はまだそれが分からないけれど、まだこのままの関係でも良いかとも思う。 「ほらっ、行くんだろ?」 勢い良く立ち上がり、ズボンと上着に付いた砂を叩き落して手を差し出せば。 「はいっ!」 元気な声と共に、迷わず手を握られる。 こんなふとした瞬間さえも、啓太となら愛しく思える。 出来るだけ怖がらせない様に。 両思いにはまだ遠いこの関係。 でも、近い内に絶対変えてみせる。 だから、このまま手を引いて抱きしめたい衝動をぐっとこらえた。 「ほらっ、早くしないとヒデに怒られるんだろう?」 さり気なく啓太の手をぎゅっと握って走った。 今頃角を出してカンカンに怒っているだろう男の待つ生徒会室へ。 当サイト初の王啓です。 まだ両思いではありません。 王→啓ですね。 それにしても最近短すぎる話が多いような気がします。 今回は海辺でのお話です。 これからの季節、海って良いですよね。 きらきら輝く海。 ここ数年行っていない海に焦がれております。
葵葉奈でした。 |