bitter
 Happy birthday to you.
 

 bitter

 私は甘いものが嫌いだ。
 それなのに、最近の私はどうやら以前ほど甘いものが嫌いではなくなった様だ。

 放課後の会計室。
 いつもなら既に来ている筈の啓太が、まだ顔を出さない。

 「臣。」

 「はい?」

 先程から時計ばかり見る私に、臣は何処か楽しげに返事をする。
 臣を楽しませるだけだと分かりつつも、今の時間になっても啓太が来ないのが気に入らない。
 またどうせ学生会に捕まっているのだろうが、今日はそれすらも気に入らない。
 理由は分かっている。
 今日は、私の誕生日だからだ。
 もちろん、啓太もそれは知っている筈だ。以前聞かれて、ちゃんと教えてやったのだから。
 それなのに・・・。

 「何故来ないんだ。」

 くすくすと臣が楽しそうに笑う。

 「何を笑っている。」

 面白くない。

 「郁、今日は伊藤君は来ませんよ。」

 「何故だ。」

 私が知らない啓太の予定を臣が知っているのも、やはり面白くない。
 あからさまな私の態度に、臣はますます楽しそうにする。
 それがまた私には不愉快で、事態は一向に私に良い様にはならない。
 それもこれも、みんな啓太が今日ここに来ない所為だ。
 八つ当たりなのは分かっている。
 それでも、面白くないものは、面白くない。

 「今日は気分が悪い。帰るぞ。」

 そう私が言ったのに、臣は立とうとしない。

 「どうした。帰らないのか?」

 臣はパソコンに向けていた視線を、少しだけこちらに向けて、にっこりと何かを企んでいる様な意地の悪い顔で笑った。
 絶対何かある。
 そうは思っても、臣が口を割らないのは分かっている事だからあえて聞かない。

 「きりが良くないので、僕はもう少しやってからにしますから、郁は先に帰っていて下さい。」

 「わかった。あまり無理をするなよ。」

 分かっているとは思っているが、一応念を押しておく。
 相変わらず意地の悪い笑顔を張り付かせ、臣は笑っていた。

 「ではな。」

 「はい。」

 会計室を出た所で立ち止まると、中から臣の笑い声が聞こえだす。
 珍しいこともあるものだ。







西園寺さんの誕生日には仕上げる予定だったのですが、
にっちもさっちもいけない状況に陥ってしまった為、
完全UPまでもう暫く時間をかけたく思います。
続きはまた後日UP致します。


        葵葉奈。